久しぶりの報告は、5月1日に事務所で行った学習会の報告です。
今回は、初めての人、ずいぶんと久しぶりの人の参加もあり、7名での学習会となりました。
学習を始める前に、差し入れのお菓子を食べながら書籍の紹介、手話研究所が発行している「手話・言語コミュニケーション-2」と「-3」。「-2」は手話の言語性について、「-3」は、ろう教育についての特集です。それぞれの専門家が執筆されており充実した内容です。もう一つは、全通研学校、全通研アカデミーのシリーズです。最新は、差別解消法と高齢聴覚障害者福祉についてです。これは講演記録ですので、とても読みやすく、分かりやすい内容です。
みなさんも、ぜひ読んでみてください。手話や聞こえない人たちの暮らしについてより深く学習することができます。
さて、今回の例文は、
- 病院の先生から、「大丈夫です」といってもらって一(ひと)安心。
- あなたの車、中古車とは思えないくらいきれいですね。
の2つです。
①病院の先生から、「大丈夫です」といってもらって一(ひと)安心。
さて、どう表現しましょうか。表現方法は色々とありますが、文章にはない前提条件があります。それは、何か心配するような病気の可能性があって診察をうけて、それを友達に報告している場面での話だと思われることです。
みんなで順番にお互いの表現を確認しながら繰り返し表現をすると、ポイントと思われたのは
○病院に通っているなどの前提あれば「病院の先生」の手話は…/病院/先生/ではなくて、/医師/で大丈夫なようです。
○一安心の手話は…これが難しい。手話表現としては、/ホッとする(鼻から息を抜く仕草)/や/安心(胸をなで下ろす)/に、“一安心”のような表情を付けて表現をしていました。
携帯に入っている大辞林では、
「一安心」:一応安心すること、ひとまず安心すること。「手術が成功して、一安心する」と例文が載っていました。「安心した」=「一安心した」ではないのです。このあたりをどう表現するのか。難しいですね。/少し/安心/ではおかしいような・・・。
もちろん、そんなに気にしなくても良いという意見もあります。
○一安心は、いつしたのか
/医師/言われる/と表現して、話し相手に向かって「一安心」とやれば、「ひとあんしんだゎ」と話しているように見えますが、/医師/いわれる/(医師の方を向いて)/「一安心」/(話し相手にむいて)/私/とすると、「先生に言われた“時”に一安心した」となります。「一安心」と誰に言うかでニュアンスが違ってきますね。
- あなたの車、中古車とは思えないくらいきれいですね。
この例文はどうでしょう
〇車をどう表現するか…片手で”コ”をする車では、ちょっと分かりづらいですね。上手く説明できませんが、この手話からイメージする“車”が俯瞰的で、“動いている車”や“駐車場に止まっている車”は上手く表せますが、自分が見ている“きれいな車(目の前にある車)”を表すには、/(ハンドルを握る)車/の方が、きれいな車を実サイズでイメージできます。
〇「思えないくらい」を淡々と/思う/ない/と表現すると、「中古車だと『思わない』」となります。「…と思えないくらい」という意外性が表現するには、/思う/ない/の表現に驚きの気持ちを入れることが大切です。/思う/の代わりに/見る/を使う方法もありますね。他には、/あなた/車/(車を)指さし/きれい//中古/へ~/と、/なるほど(へ~)/を入れた表現もありました。
〇中古車と思えない車はどんな車?…この表現は/新車/並(対等)/という表現がありました。これはなかなか良い選択ですね。新車並なのですから、この手話を表現した時点で新しい車ではないことが分かります。使う手話単語も少なくて済みます。
この表現に感心していると、たとえば10年使った車でも、手入れをちゃんとしている「中古車とは思えないくらいきれいな車」もあるのではないかという指摘がありました。みんなで一緒に勉強するから出てくる見方ですね。一人では、これほど発想が広がりません。
さて、みなさんならどう表現されるでしょうか。
気が向いたら自主学習会を覗いて見てください。ゆるくてハードな学習会です。
報告を読むのに動画あった方が分かりやすいという意見をいただいて、試しに、例文の表現をHPにアップしてみました。撮影するのはなかなか大変でした。思うようになりません。言うは易く行うは難しです。
ご意見は色々と出てくると思いますが、少しでも参考になればと思います。
(文と絵と動画 小山秀樹)
※編集部より:動画はまだアップしていません。しばらくお待ちください。